今回は不登校における流れ、つまり典型的な5つの段階についてお話ししていきたいと思います。
まず、5つの段階があります。これを天気になぞらえると、
- 低気圧
- にわか雨
- 暴風域
- 台風の目
- 晴れ間
というように、この5つの段階で進むことが多いようです。
それぞれの時期でどういう状況であるのか、どういった対応をしていけばいいのかということについても情報提供していきたいと思います。生徒や保護者の方が、いま自分がどういう状況にいて、この先どうなるのかというように予測できることが、少しでも心の安定につながればと思っています。
目次
1. 低気圧
気づきにくい兆候
ではまず1つ目の「低気圧」についてですが、これはまだ具体的な行動として表に出てきていない時期で、特に保護者の方にとっては何も気づいていないというような時期です。
この時期の状況としては、「学校に行きたくない」という形で、少し登校しぶりするような時期です。もしくは、普通の病欠と変わらないような「お腹が痛いから休みたい」というような訴えが出てくる場合もあります。
しかし、この低気圧期の間にもストレスや生きづらさを蓄積している可能性があることに注意が必要です。
実例としても、「以前お腹が痛いから学校を休みたいと言っていたのも、学校に行きづらいというサインだったのかもしれない」と振り返る保護者の方も多いです。
対応
そしてこの時期の対応についてですが、この段階に関しては、なかなか本人も周りも何が起こるかを予測するのは困難です。そのため、対応すること自体が難しい時期だと思います。
理想としては、この「低気圧期」にストレスや生きづらさをうまく解消することができればベストなのかもしれませんが、気づくことが難しいのが実情かと思います。
2. にわか雨
行けたり行けなかったりと保護者のプレッシャー
では、2番目に「にわか雨」についてお話していきたいと思います。この時期は、具体的な行動として学校に行かない、または学校に行きづらくて、欠席を繰り返すという状況が多く見られます。出席したり、欠席したりという状況が繰り返されることが多いです。
保護者の立場としては、とにかく学校に行ってほしいという気持ちで多少無理をしてでも学校に行かせる場合もあります。この時期においては学校に行ったり行かなかったりする状況が続くため、保護者も生徒も、「このまま学校に戻れるのではないか」と期待するからです。
これを「登校刺激」と呼んでいますが、保護者の学校に行かせたいという気持ちが強すぎるため、生徒は非常に罪悪感や苦しさを感じやすい時期でもあります。
特に、生徒自身は学校に行きたいと思っているものの、なかなか行けないという状況であれば、親からのプレッシャーが追い打ちになりさらに状況が悪化する可能性もあります。
この時期の具体的な対応としては、具体的な問題が存在する場合は、その問題を解消する必要があります。また、何らかの支援が必要であったり、精神的・身体的にも疲れていて休養が必要な場合は適切な手段を講じることが肝心です。
解決すべき問題
どのような問題が発生しているかということに関しては、一人一人全く異なった事情があります。イメージしやすいものとして具体例を3つ挙げます。
1つ目は学校でのいじめや、学校の先生との折り合い悪いなどの問題がある場合は、その問題を解決しなければ先に進むことができない状況になります。
2つ目は、精神的や身体的な疲労が溜まっている状況で、この期間に思い切って1ヶ月~数ヶ月休ませる判断が非常に重要になる場合があります。精神的に疲れていたり、身体的な症状として朝起きられない、思考や感覚が鈍る、涙が出てくるなどの体調不良が現れている場合は休養が必要で、この時期に1ヶ月しっかり休むことで元の状態に戻れることもあります。
しかし、これは実際の事例としても非常に多いのですが、この期間を無理してがんばってしまった結果、完全に回復するまでに1年以上かかる事例があります。
3つ目の例としては、学校というシステム自体が生徒に合っていないケースです。現在の学校の管理や干渉は20年前と比べて非常に厳しく、以前よりも息苦しく生きづらいと感じることが増えています。
それと並行して、学校に行く必要性が薄れてきており、かつては学校でしか学べなかったことが、今はオンラインや他のサービスで習得できるようになっています。このような状況を考えると、学校自体が合っていないということが、学校に行かないという行動として現れてくることがあります。
対応
以上のようなそれぞれによる事情があり、学校に行けたり行けなかったりする時期に関しては、その要因を見極めることが重要です。状況によっては、思い切って休ませる判断も必要になってきます。
3. 暴風域
絶望と不安
そして、3つ目は「暴風域」と名付けましたが、この時期は非常に苦しい時期になります。なかなか学校に足が向かない状況のことが多く、不安や絶望感、葛藤を抱きながら過ごす時期です。
生徒側は親や学校の先生、周囲の大人からのプレッシャーに悩み、学校に行けないことでさらに葛藤が深まります。
人間関係が急激に制限されるため、精神的なストレスも増大します。学校に行かないという行動自体が環境の大きな変化であり、それがさらなるストレスとなる場合があります。
この時期にはリストカットなどの自傷行為をしたり物欲が増して過剰に何かを買いたいと訴えたり、暴力的な言動などの形で現れてくることもあります。
ゲームやYouTube、スマホなどで長時間過ごすので、保護者の方は見ていて苛立ちを感じることが多いです。
対応
この時期はエネルギーが充電されるまで「待つ」ことが重要です。近すぎず、遠ざかりすぎない適切な距離感を保つことが大切です。
保護者の方自身も消耗しないように、ご自身のケアをすることが結果的には良い方向に進むと思われます。
また、この時期にフリースクールやオルタナティブスクールで活動し始めるのは難しい場合が多いです。
4. 台風の目
安定期と少しの不安
次に、4つ目は「台風の目」と名付けましたが、この時期は学校に行かないことがある程度受け入れられ、生徒側も保護者側もある意味で安定しています。日常生活に関しては、ある程度の受け入れの気持ちと安心感がある期間です。
しかし、将来のことを考えたり、友達と自分を比較したりすると再び不安を感じることがあります。
保護者も「生きていてくれれば十分だ」という心境になり、冷静な判断ができるようになってきます。
対応
この時期の対応としては、「無理してがんばらない自然体」でいるのがよいのではないかと思います。日常生活が安定しているのであれば、それを維持すればよいのです。
また、スマホやゲームなども次の段階のように飽きる時期がやってきます。
保護者の方も、これまでの疲れが溜まっているので、気を抜くときは気を抜き、休めるときは休むといった対応が良いと考えます。
5. 晴れ間
新たな選択肢
そして、最後に五つ目は「晴れ間」と名付けましたが、この時期は希望を感じられる段階です。
具体的には、「台風の目」の安定した状態を過ぎて、学校に行かないという生活に少し飽きてくるようになります。ゲームをしたり、YouTubeを見たりと、そのような生活にも飽きるということです。
そういった「飽きた」と感じる時期は、何か行動を起こすエネルギーが溜まってきたサインでもあります。
対応
この時期の対応としては、色々なことを試して、何か行動に移せそうなことがあれば、それを実行するといいでしょう。
フリースクールやオルタナティブスクールに通うという選択肢も出てきます。これよりも前の段階で焦るとうまくいかない場合もあるので、「晴れ間」の時期になってから、フリースクールやオルタナティブスクールを探すのがよいと考えます。
まとめ
以上が、
- 低気圧
- にわか雨
- 暴風域
- 台風の目
- 晴れ間
というこの5つの段階です。
それぞれの段階で感じる感情や状況を理解することで、より適切な対処が可能になります。不登校に対する新たな視点を持っていただければ幸いです。
なお、不登校に関しては、学校に「戻す」ことだけを考えるのではなく他の選択肢から「選ぶ」という考え方へと変化しています。
詳しくは以下の記事をご覧ください。